介護記録の書き方について「自分の考えや意見は書かいてはいけない」と教わったことはありませんか?
実は、介護記録には介護福祉職の解釈、分析を記述することも重要とされているのです。
介護の仕事はチームワークを必要とします。他の介護福祉職員や他職種にとって、記述した分析結果が、その後の利用者への対応や経過において重要な資料となることがあります。
しかし、自分の解釈や分析を重要な資料にするには、適切に記録をする必要があります。介護福祉職が扱う記録は家族等に開示を求められることもあるので、わかりやすく読みやすい記録を書かなくてはいけません。
わかりやすく読みやすい記録を書くには「文体」を使い分ける必要があります。
この記事では、介護記録の文体の使い分けかたを解説します。介護記録の文体を使い分けることで、以下のような効果があります。
- 情報を適切に伝えることができる。
- 介護事故のリスクマネジメントになる。
- 教育・指導者として論理的に説明することができる。
介護記録の文体は、介護福祉士試験にも出題されることから、リーダー職、管理者などのスーパーバイザーには必須のスキルとなります。
是非、これを機に介護福祉職としてのステップアップを目指してください。
↓↓↓わかりやすい例文集もありますのでよろしければどうぞ!↓↓↓
文体って何?どうして使い分ける必要があるの?
「文体」とは文章の型のことです。
その型に合わせて文章を書くことで、誰が書いても一定の形を保つことが出来ます。そうすると、人に伝わりやすい文章になったり、場面に合う文章になるのです。
意識して使い分けしやすい文体は"「です・ます調」の敬体"と"「だ・である調」の常態"です。介護記録で使われるのは「だ・である調」の常態です。
なぜなら、介護記録を読む人は単に事実を知る必要があるため、敬体のように末尾に「~であります」と置いて、丁寧な印象を受ける必要がありません。なので、言い切るような形で「~のケアをする」「~と考えられる」などの常態を使います。
この通り、書き手は文体を「誰がどんな目的で読むのか?」によって使い分けます。
介護記録の記述では4つの文体を使い分ける
介護記録では「だ・である調」の常態を基本として、4つの文体を使い分けます。
- 叙述体(じょじゅつたい)
- 要約体(ようやくたい)
- 説明体(せつめいたい)
- 逐語体(ちくごたい)
この4つの文体を使い分けることで、文章の長さ、詳細度、主体との区別が明確に分けられ、伝わりやすさが大きく変わります。
介護記録の読み手には介護福祉職のほかに利用者、利用者家族、ケアマネージャー、看護師、医師がいます。
これらの読む人の目的としては「事前情報収集」「緊急時の情報収集」「調査や研究」などが考えられます。
記録が素早く簡潔に書かれていれば、短時間で必要なポイントだけ理解できます。詳細に明確に書かれていれば、その状況を詳細に理解して分析や改善をすることができます。
文体の必要性がわかったところで、次にそれぞれの文体の特徴や使用例を解説します。
叙述体
叙述体とは「客観的事実や起こったことを順を追って記録するときに用いる文体」です。
記憶していることを思い出しながら記述をする方法で、使用頻度も高いです。4つのなかで一番書きやすい文体だと思います。
使用例としては、出来事をそのまま記述するとあるので、見聞きしたままのことを記録します。
10時に〇〇様が居室から出て来られ、窓際の椅子に座り10分ほど新聞を読まれる。その後、15分ほど居眠りをされており、起きる様子がない為「〇〇さん」と声をかけると「熱があるみたい」と言われる。額に手を当てると熱感がある為、体温測定をする。体温は37.5度。「ベッドで休みましょうか?」と声をかけると「そうします」と言われる。居室へお連れしてベッドに横になられる。頭部をクーリングする。
このように、出来事を順に追って記述します。
読む人は、時間の経過に沿って何が起きているのかを理解できます。重要な部分を自らピックアップ出来るので、用途の広い文体だと思います。
要約体
要約体は「要点を整理してまとめるときに用いる文体」です。
連続した出来事や、長期間のケース記録をコンパクトにして文章を短くするときに使用します。
文章を短くすると、読む人が短時間で内容を理解できます。なので、長期間の出来事をまとめて理解する必要がある時には、要約体の文章を使うと、より効率的な連携ができます。
課題を見出すアセスメントに記述する時や、各報告書などに使用します。
使用例としては、過程から重要な部分を切り取って記述します。
〇月〇日よりデイサービスに通い始める。〇月中旬より、一人で買い物に行くことができるようになり、公民館の俳句会にも参加されるようになった。〇月下旬には、訪問介護の回数を週1回に減らすことができた。
このように、要点を切り取ったことにより、読む人は、自立生活が改善しているという重要な部分だけ理解できます。
説明体
説明体は、出来事に介護福祉職の解釈や意見を付け加えるときに用いる文体です。
前後関係の説明が必要である出来事に、過去の部分の記述が無い時や、詳細度を高める必要がある時に用いると効果的です。
介護事故が起きた時や、コミュニケーションの時に感じた様子などを記述する事が多いです。
以下は、例文です。
〇時〇分、〇〇様よりコール呼び出しがあり訪室する。伺うと「タンスの上に置いてあった時計が無くなった」と言われる。朝は置いてあるのを確認していたとの事。「こちらで状況を調べてみます」とお話すると「お願いします」と言われる。以前と同様に、昼に面会に来られた娘様が持ち帰っていることが考えられる。
このように、考えられる可能性の事実性の高いことを記述します。
読む人は、書き手の主観的情報がなくては原因がわかりません。解釈があることで、可能性のある原因が理解できるようになります。
主観的な情報を記述する場合には、客観的事実と区別できるように注意をする必要があります。客観的事実の後に、主観的な情報を記述をすると区別しやすくなります。
逐語体
逐語体は、会話記録のように、一語一語を加工せずにそのまま記述します。
加工しないことで、読んだ人がより客観的に分析しやすくなります。
利用者の願望や性格を分析する時や、認知症・精神疾患のある方との会話記録が必要な時に用いることがあります。
読む人は、会話情報から様々な解釈をすることができます。なので、事例検討などに使用することもできます。専門医師であれば、疾患の分析に用いることができます。
まとめ
- 文体は「読む人」の目的によって使い分ける
- 文体の種類は4つある
- 叙述体
- 要約体
- 説明体
- 逐語体
介護記録の作法には文体以外にも書き方や留意点がありますが、この記事では型となる文体について解説しました。
文章を書くことが初めから上手な人もいますが、苦手な人はまずは型を覚えることをお勧めします。私も、文章を書くことが苦手なので、常に型を意識するようにしています。
なので是非、読みやすくてわかりやすい介護記録が書けるよう、教えることが出来るようにこれからは「文体」を意識して記述するようにしてみてください。