利用者が過ごす室内の環境。
利用者へのプレゼント。
このようなことを決める時に、機能性やデザインの他に「色」にも悩むことはありませんか?
色が人の感情や心に影響を与えることを「色彩心理」と言います。
実は、私たちの日常にも多く使われているんですね。
例えば、わかりやすいのが危険や注意を促す「赤」。
信号機や禁止を知らせる標識などは赤色ですよね?
他にも、清潔感を感じさせる「白」。
トイレなどの水回りはだいたい白ではないでしょうか?
以前に、色彩心理に詳しい友人から「重度の認知症高齢者の不穏な気持ちを落ち着かせるには薄ピンク色が良い」という話を聞いて、施設の利用者の方の生活スペースにあるものを取り入れたことがあります。すると、今まで大声で怒鳴ることの多かった方が穏やかな口調で話すようになりました。
この詳しい方法は実用例で紹介します。
今まで私は「色だけで介護の問題解決が出来たら苦労しないよ」と思っていました。
しかし、成功体験のおかげで色が人の心理に与える影響の大きさは、介護の現場においても積極的に取り入れる必要があるという考えに変わりました。
この体験を出来るだけ多くの人と共有したいので、介護の現場でつかえる「介護に役立つ色彩」と「実用例」を紹介します。
介護に役立つ色彩
それぞれの色が与える色彩心理についてを調べるといくらでも検索結果は得られるので、介護の現場でつかいやすいようにまとめてみました。
前向きで元気になる色
赤色、オレンジ色、黄色
これらの色は暖色であり、膨張色です。
他の色に比べると、目立って大きく見える色です。
これらの色は、明るく活発なイメージを人に与えます。
レクリエーションや運動の時などに使用すると最適かもしれません。
サッカーのカズさんは、1993年のJリーグ初代年間MVPの受賞の時に、赤いスーツを着てカズダンスをして登場しました。めっちゃ目立っていましたね。
よく、高齢者介護で赤色を使うと血圧を上昇させてしまい危険と言いますが。言い過ぎですよね。
メリハリという意味で使用することが大切ですね。
心を癒し回復させる色
青緑色、緑色、紫色
これらの色は中性色と呼ばれる色です。
緑は自然界の植物に多く存在しています。
よく緑色を見ると目に良いと言われていますよね?
これは、人間の目が視覚的に最もとらえやすい色である為なのです。
原始的な時代から緑を多く見てきた人類だからこそなのでしょうか?
不思議ですね。
壁や床などが一面に広がって無機質に感じる施設などでは、植物を置いておくと効果的です。
コミュニケーションを促す色
黄色、オレンジ色
進出色の明るい色はコミュニケーションを促します。
黄色は親しみやすさや開放的な印象を与えます。
逆に、灰色や茶色の後退色は重さや硬さを感じやすい色で、保守的なイメージを与えてしまいます。
しかも、これらの色は高齢者が「嫌いな色」のトップとして回答している調査結果があります。
「高齢者は地味な茶色がいいんだろうなぁ」と思ったことはありませんか?
これは完全に若者の先入観のようです。
ですから、高齢者が明るく、目立つ色を嫌うということはないので一度、黄色い服を着て接してみてください。
「いい色ねぇ」と言われ、会話のきっかけになるはずです。
穏やかな気持ちになる色
ピンク色、ベージュ色
この色は、軽くて柔らかい印象を与えます。
女性高齢者に人気のある色です。
ピンク色は女性ホルモンを活性化してβエンドルフィンやドーパミンといったホルモンを分泌させる作用があるといわれています。若さを保つ色でも紹介されることが多いです。
ベージュ色は日本家屋の室内に多く利用されています。
畳や木材などの自然物で出来た室内にいると、なぜか穏やかな気持ちになれますよね。
日本人の穏やかな気質は、このようなところから影響を受けているのかもしれません。
介護の現場では、衣服や環境作りに用いるといいですね。
食欲がわく色
赤、オレンジ、黄色、茶色
食事は彩りが大切とよく言います。
暖色系の色は食欲を湧かせて、紫系統の色は食欲を減退させるようです。
一色に染めるよりも鮮やかに見せることが大切です。
メンタリストDaiGoさんはホリエモン万博2020に出演したとき、いくらと蟹のどんぶりを食べているシーンで「赤の横に緑をのせると赤が際立つ」と言っていました。
コントラストをつけてお互いの色を際立たせることにより、食欲をさらに増進させることが出来るのです。
介護の現場でも使えそうな知識ですね!
実用例
実用例として、薄ピンク色の効果を紹介します。
対象の利用者は、特養に入居されているアルツハイマー型認知症の女性高齢者です。
認知症を患う前は、料理や生け花、書道などの先生をされていた方です。
礼儀や作法については自分にも人にも厳しいのですが、人を喜ばせるひょうきんな一面もあります。その人格はところどころ見ることが出来ました。しかし、突然怒りだしたり、物を叩く行為が度々あり、他の利用者とのコミュニケーションを一切とろうとしないことから、孤立した空間で過ごしていました。
そこで、その利用者の席を窓際にして、正面の壁に薄ピンク色の掛け軸と、ピンク色の補色になるライトグリーンの観葉植物を置いたところ、ニコニコとされながら掛け軸に話しかけ続ける時間が出来るようになりました。
掛け軸に話しかけることが正解かわかりませんが、怒りながら物を叩く時間があるよりは本人にとってもポジティブな時間であると思います。
施設介護では、職員が一人の利用者に対して出来ることは限られています。しかし、環境を一度作ってしまえば、その効果が続く限り手を加えることはありません。人材不足に対応する手段として「自動化」は一つの手段かもしれません。
いかがでしょうか?
色が人に与える影響は、介護の現場でも取り入れることは出来ると思います。
是非、皆さんの介護現場でも取り入れてみて下さい。
この記事が、その一助となっていただけると幸いです。